一目均衡表(いちもくきんこうひょう)とは、トレンド転換の時期と投資家に注目されている価格帯を判断するテクニカル分析の1つです。
一目均衡表は、一般的なテクニカル分析とは異なり、「時間」に重きを置いてトレンドの周期を考えます。
その名の通り一目で相場の状況を判断することができるため、現在の買いと売りが均衡している価格帯を知ることができ、それをもとに売買戦略を立てやすくなります。
このように便利なテクニカル分析として、昭和初期の日本で開発されてから今日まで世界中の投資家に使用され続けています。
このページでは、人気のテクニカル分析である一目均衡表の基本的な仕組みから使い方まで分かりやすくご紹介しています。
この記事で分かる!テクニカル分析のこと
一目均衡表(いちもくきんこうひょう)の仕組みとは?雲と5本の線で構成されている
一目均衡表とは、異なる日数で計算した5本の線から、「相場のトレンド転換の時期」や「抵抗線・支持線」を判断するテクニカル分析です。
一目均衡表を使用して取引を行うためには、5本の線が持つ意味を理解することが必要になります。
それでは、一目均衡表がどのような仕組みになっているのか?一目均衡表の基本的な仕組みを構成要素と共にご紹介していきます。
一目均衡表とは?
一目均衡表は昭和の始めに、細田悟一(ほそだ ごいち)氏によって作成された日本発のテクニカル分析方法で、為替や株の値動きを予測する分析として世界中の投資家に愛用されています。
上記画像は、一目均衡表を構成する5本の線の場所と名称になります。
一目均衡表は、他のテクニカル分析とは少し異なり、「時間」に注目して作られています。
一般的なテクニカル分析では、平均価格や過去の価格を上回ったら買いシグナルになる、など価格に注目している分析方法が多いです。
しかし一目均衡表は、価格をもとに算出した値を過去や未来にずらすことによって、「トレンドには周期がある」という時間に注目した考え方から価格の予想に役立てるというものです。
それぞれの線の作られ方は以下の通りになりますが、丸暗記する必要は無く、このような違いがあるということを理解しておけば充分です。
基準線 | 過去26日間の高値と安値の平均値 |
---|---|
転換線 | 過去9日間の高値と安値の平均値 |
遅行スパン | 当日の終値を26日さかのぼった値 |
先行スパン1 | 基準線と転換線の中間地を26日先に記入したもの |
先行スパン2 | 52日間の高値と安値を26日先に記入したもの |
雲 | 先行スパンの間に発生し、抵抗の大きさを表している |
一見すると複雑に感じますが、これらの線を使用して抵抗線・支持線とトレンドの転換を図るものになります。
ここからは、一目均衡表を構成する5本線の役割から使い方を1つずつ見ていきましょう!
一目均衡表の基準線とは
一目均衡表の基準線は、過去26日間の高値と安値の平均値を表して、最近の相場の大まかな方向を指し示してくれる線です。
移動平均線に似ていますが、移動平均線は過去の終値を使用していて線が滑らなのに対して、一目均衡表の基準線は安値と高値を使用しているため、線の形が階段の様になっているのが特徴的です。
移動平均線については移動平均線とは?チャートの見方や設定ごとの使い方に詳しくまとめてあるので参考にしてみて下さい。
先ほど基準線は、相場の大まかな方向を指し示してくれると述べましたが、ローソク足との位置関係からトレンドを判断することができます。
ローソク足が基準線よりも上に位置しているときは「上昇する力の強い相場」、ローソク足が基準線よりも下に位置しているときは「下落する力の強い相場」であると考えることが出来ます。
また、基準線が水平でローソク足と同じような位置にいるときはもち合い相場であることが分かり、相場における3つの基本トレンドの強さを測る手がかりになります。
一目均衡表の転換線とは
一目均衡表の転換線は、過去6日間の高値と安値の平均値を表していて、基準線と考え方は同じですが、値を取っている期間が基準線よりも少なく、より直近の株価に近い値となるために、株価の推移を表すローソク足と近い動きになります。
基準線と比較して、転換線が上に位置にしているときには「上昇の勢いが強い相場」、反対に転換線が下に位置しているときには「下落の勢いが強い相場」と判断することができます。
一目均衡表の遅行スパンとは
一目均衡表の遅行スパンは、現在の終値をチャート上の26日前の場所に表示しているということになります。
遅行スパンの考え方は非常にシンプルで、過去のローソク足と現在価格である遅行スパンを比較します
遅行スパンと比べて過去のローソク足が下に位置していれば、上昇相場であり、過去のローソク足が上に位置していれば下落相場となります。
これは単純に、現在の価格が過去の価格よりも上昇していれば、過去のローソク足よりも遅行スパンは上にあるはずという考え方で、反対に現在の価格が過去よりも下落していれば、過去のローソク足よりも遅行スパンは下にあるはず、ということです。
一目均衡表の雲(先行スパン1・先行スパン2)とは
一目均衡表の雲とは先行スパン1と先行スパン2の差を表し、抵抗線・支持線の役割を果たすと広く知られています。
先行スパン1は「基準線と転換線の平均値」で、先行スパン2は「過去52日の高値と安値の平均値」のことで現在価格の26日分未来にずらして記入されています。
抵抗線・支持線とは?
抵抗線とは、上昇を始めたときに上げ渋る価格帯のこと。
支持線とは、下落を始めたときに下げ渋る価格帯のこと。
大きな買い・売りが集まっていたり、何かしら理由があると考えられる。
雲が厚いほど強い抵抗線、支持線になり、雲を抜けるとトレンドが転換しやすいため、多くの投資家が注目している部分になると言えます。
また、先行スパン1と先行スパン2にも意味があり、未来のトレンドの方向を予想することができます。
トレンドの方向を表す基準線と転換線の平均値である先行スパン1と、過去52日間の高値と安値の平均値である先行スパン2を未来に記述することにより、直近の大まかなトレンドが割り出されます。
必ずその通りに進むわけではありませんが未来の大体のトレンド方向が分かっていれば取引に役立てることが出来ます。
更に踏み込んだ一目均衡表の実践的な使い方を知りたい方は一目均衡表の見方・使い方 雲や三役好転・三役逆転から相場状況を読み取るに詳しくまとめてあるので参考にしてみて下さい。
三役好転・三役逆転など売買シグナルから解説!一目均衡表の基本的な見方・使い方
一目均衡表では、相場のバランスを見ながら、5本の線が表す売買シグナルをもとに取引を行います。
基本的な仕組みが理解できたところで、一体どのように使用するのか?実際のチャートを読み解きながら見ていきましょう!
一目均衡表(基準線・遅行スパン・転換線・雲)の基本的な見方
一目均衡表は、先ほど紹介した線と雲がどんな状態かを見て、種類ごとの特徴から現在のトレンドを判断することが可能です。
複数の線が同じトレンド方向を指し示していれば、自然とエントリーの根拠も強くなります。
取引する際に基本的に見るべき特徴をまとめると以下のようになります。
種類ごとの特徴 | |
---|---|
基準線 |
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転換線 |
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遅行スパン |
|
雲 |
|
一目均衡表の三役好転・三役逆転(さんやくこうてん・さんやくぎゃくてん)とは
※水色:遅行スパン、緑色:転換線、赤色:基準線
一目均衡表には、3つの条件が揃った場合に現れる「三役好転・三役逆転」と呼ばれる強い売買シグナルがあります。
三役好転は上昇トレンド、三役逆転は下降トレンドを示唆していて、判断基準となる3つの条件は以下の通りになります。
- 三役好転
-
- 転換線が基準線を上抜けている状態
- 遅行スパンがローソク足の上にある状態
- ローソク足が雲を上抜けている状態
- 三役逆転
-
- 転換線が基準線を下抜けている状態
- 遅行スパンがローソク足の下にある状態
- ローソク足が雲を下抜ける状態
しかし3つの条件が揃うことは頻繁には無いため、2つ揃った段階で反転しても良い様に損切注文を入れてエントリーしてみることを考えておいても良いでしょう。
三役好転・三役逆転が発生すると中長期単位でトレンドが発生することがあるので、注目しておくべき強い売買シグナルの1つになります。
一目均衡表の見方「転換線とローソク足による売買シグナル」
※水色:遅行スパン、緑色:転換線、赤色:基準線
上記で述べた特徴以外にも、一目均衡表の見方として頭に入れておきたい売買シグナルが存在します。
転換線は、基準線よりも上か下かで現在のトレンドを把握することが出来ますが、「転換線」という名前の通りにトレンド転換のタイミングを計る際に使用することができます。
具体的には、転換線がローソク足を上抜ける(下抜ける)ことでトレンド転換になり、移動平均線と同じように、ゴールデンクロス・デッドクロスと言います。
ゴールデンクロスした場合には、上昇トレンドを示唆するために買いサイン、デッドクロスした場合には、下降トレンドを示唆するために売りサインとなります。
なぜ、ゴールデンクロス・デッドクロスが出現するとトレンド転換になるのか?の根拠については、ゴールデンクロスとデッドクロスとは?に詳しくまとめてあるので参考にしてみて下さい。
一目均衡表の見方「ローソク足と遅行スパンによる売買シグナル」
※水色:遅行スパン、緑色:転換線、赤色:基準線
また、ローソク足と遅行スパンがクロスしたときもトレンドの転換点となります。
遅行スパンは、現在の価格を26日前にずらして記入しているため、過去と現在の価格を照らし合わせてくれる役割があります。
遅行スパンがローソク足を上抜けた(下抜けた)場合には、現在の株価が過去の株価よりも上昇しているということになるため、上昇トレンドとなります。
一目均衡表の弱点とは?雲や売買シグナルが機能しにくい状況
一目均衡表にも、他のテクニカル分析と同じように機能しにくい場面が存在します。
それはどんな場面なのか?また、その場面ではどのように取引したら良いのか?弱点を補強してくれるテクニカル分析である「MACD」と共にわかりやすく解説していきます。
一目均衡表の弱点とは?
一目均衡表の弱点は、株価が急騰(急落)した場合に、雲や転換線、基準線を超えて一方通行でトレンドが発生し続けると、その後どうなるか一目均衡表だけでは判断が難しくなります。
また、値動きの少ないもち合い相場が長期間続くと、基準線や転換線、ローソク足が複雑に交錯しあっているため、買いか売りか判断しにくい状態に陥ることがあります。
そんなときには、他のテクニカル分析を合わせて使い、複数の分析で同じシグナルが発生したときに取引の判断を行うと良いでしょう。
また、分からない状況の時には無理に取引を行わないというのも手段の1つで、貴重な資金を失わないようにリスクの高い取引は行うべきではありません。
一目均衡表と相性の良いテクニカル分析の1つに、MACD(マックディー)があります。
MACDは、単なる相場の動向だけでなく、ゴールデンクロス・デッドクロスを見ることができるため、トレンドの転換にも反応してくれます。
一目均衡表とMACDを組み合わせて使用する
※緑色:MACD、赤色:シグナル
MACDは、MACDとシグナルと呼ばれる2本線で作られていて、期間の異なる線を組み合わせて、短期と中長期の動きを比較し、売買タイミングを計ることができるテクニカル分析の1つです。
一目均衡表とMACDを合わせて使うことによって、売買シグナルのタイミングや指し示すトレンド方向が同じの場合強い根拠として取引を行うことが可能になります。
上記の画像を見ると、先ほど紹介したシグナルと同じ時間帯に、売りシグナルであるデッドクロスが出現していて、MACDと一目均衡表の両方が同じトレンド方向を示しています。
売買シグナルが同時に発生すれば絶対にチャンスと言えるわけではありませんが、1つのテクニカル分析で出た売買シグナルを頼りに取引を行うよりも、複数のテクニカル分析を使った方が期待値は高くなると言えます。
一目均衡表と相性の良いテクニカル指標であるMACDについて詳しく知りたい方は「MACDとは?売買の行き過ぎを測るテクニカル分析」にまとめてありますので合わせてご覧下さい。
一目均衡表についてまとめ
一目均衡表の基本的な仕組みや使い方、合わせて使うべきテクニカル分析についてご紹介してきました。
一目均衡表とは、異なる日数で計算した5本の線から、「相場のトレンド転換の時期」や「抵抗線・支持線」を判断するテクニカル分析です。
一目均衡表は、一般的なテクニカル分析とは異なり、「時間」に重きを置いてトレンドの周期を考えています。
その名の通り一目で相場の状況を判断することができるため、昭和初期の日本で開発されてから今日まで世界中の投資家達に使われ続けています。
多くの投資家が使うテクニカル分析を使用して、他の投資家達と同じ土俵に立ち、一目均衡表を使いこなせるように経験を積んで行けば、投資家心理を理解することに繋がります。
テクニカル分析を通じて根拠を持った株式投資ができるように取引を行っていきましょう。
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ラジオNIKKEIの番組「株教室」などでお馴染みの「高山緑星」が代表を務める投資助言サービス。今なら実力証明のための銘柄『次なる大化け候補株』を無料で配信中!!
投稿者プロフィール
- 株取引を成功へと導く重要な指標「テクニカル分析」と「株価チャート」。【テクニカル分析のカタチ】では、ローソク足やチャートの見方、移動平均線やトレンドライン、ボリンジャーバンドや一目均衡表の使い方など。テクニカル重視の幅広いトレーダーに役立つ情報をご紹介します。