MACD(マックディー)は、異なる2本の移動平均線からなる「MACD」・「シグナル」と棒グラフである「ヒストグラム」の3要素で出来ているシンプルなテクニカル分析の指標です。
出現する位置によって強さが異なる売買シグナルを判断し、トレンドに乗った取引を行えます。
では、MACDとは一体何か?設定はどうすれば良いのか?
有名な売買シグナルである「ゴールデンクロス・デッドクロス」や、役割が2種類存在する「ダイバージェンス」と共に、MACDの見方・使い方をご紹介しています。
この記事で分かる!テクニカル分析のこと
MACD(マックディー)の仕組みとは?3つの要素で構成されている
MACD(マックディー)を構成する3つの要素には、それぞれ売買タイミング、トレンド転換を判断する重要な役割があります。
MACDを使いこなすためには、各指標の仕組みを理解することが必要になるため、取引を行う前にしっかりと意味を確認しておきましょう。
MACD(マックディー)とは?
MACD(マックディー)とは、従来の移動平均線を更に進化させることで、より精度の高い売買シグナルを求めて開発された、トレンド分析の中でも人気の高い指標です。
MACDの形状は、計算方法の異なる2つの移動平均線(「MACD」と「シグナル」)をもとに、この2つの距離を棒グラフで表す「ヒストグラム」で構成されています。
これまでの移動平均線よりも、トレンド発生時に売買シグナルが複数出るため、視覚的にシンプルな描写で「買い」「売り」「強弱」をハッキリと示すのが大きな特徴です。
そのため、株取引を始めたばかりの初心者だとしても”分かりやすく””使いやすい”、さらに”精度の高い売買シグナルが見える”ということから、数あるテクニカル指標の中でも高い評価を集めているようです。
MACDのことを一から知りたい方は「MACDとは?売買の行き過ぎを測るテクニカル分析」、移動平均線から掘り下げて知りたい方は「移動平均線とは?チャートの見方や設定ごとの使い方」、こちらも合わせてご覧ください。
MACD(マックディー)の構成
MACDは、短期と長期の相場を比べていて、最近の相場が上昇トレンドであれば、上向きになる仕組みです。
反対に、最近の相場が下降トレンドであれば、下向きになるという仕組みになっています。
先ほど、MACDの形状は、計算方法の異なる2つの移動平均線(「MACD」と「シグナル」)で構成されていると述べました。
この2つの線は「単純移動平均線(SMA)」と「指数平滑移動平均線(EMA)」から作られています。
ここでは、「SMA」は過去の大まかな相場方向を表す線、「EMA」はSMAよりも現在に近い相場方向を表す線だと考えてください。
ヒストグラムは、MACDの平均であるシグナルと最近の相場方向を表すMACDの距離を棒グラフにしたものです。
ヒストグラムの上下を折り返す部分のことを「0ライン」と呼び、「ヒストグラムが0ラインよりも上なら上昇トレンド」、「0ラインよりも下なら下降トレンド」と単純な表現で相場の判断ができます。
また、ヒストグラムの上下が切り替わった時に、MACDとシグナルもクロスして描写されるため、トレンドの転換に素早く気づくことができます。
MACDの基本的な見方・使い方と理解しておくべき売買シグナル
MACDを使用して取引を行うには、基本的な売買シグナルと見方・使い方を理解しておかなければなりません。
ここでは、実際にMACDを使用して取引を行う際に必須となる売買シグナルと、基本的な見方・使い方を分かりやすく解説しています。
MACD(マックディー)のゴールデンクロスとデッドクロス
MACDには、「ゴールデンクロス・デッドクロス」と呼ばれる基本となる売買シグナルがあり、上昇トレンドと下降トレンドの発生を示唆します。
MACDが、シグナル(最近の相場を表すMACDの平均)を抜けることは、最近の相場が平均から外れつつあり、相場状況が変わってきていることを意味しています。
ゴールデンクロス・デッドクロスの売買シグナルの強さを見極めるための判断基準は他にもいくつかあり、詳しくは、ゴールデンクロスとデッドクロスとは?にまとめてあるので参考にしてみて下さい。
MACDと逆方向に動く状態「ダイバージェンス」
MACDは基本的に、MACDとシグナルの指し示す方向にトレンドが発生し、両方が同じ方向を向いている状態が一番信憑性が高いです。
これは、MACDが最近の相場を表していて、その平均であるシグナルも似た動きをしているため、大きなトレンドと同じ方向を向きます。
しかし、例外として「ダイバージェンス」という現象があり、MACDの売買シグナルが指している方向とは逆方向に株価が動いている状態のことを指します。
また、MACD以外のテクニカル指標においても、相場と逆行しているときには「ダイバージェンスが発生している」と呼び、ダイバージェンスが見られた後にはトレンドが反転する可能性が高いです。
売買シグナルから取引手法を紹介!MACDの実践的な見方・使い方
MACDは、直近の相場方向を示す2本線である「MACD」と「シグナル」、2本線の距離を表す「ヒストグラム」からトレンドの転換点と売買タイミングを測ることができます。
基本となる仕組みと見方・使い方が理解できたところで、買われ過ぎと売られ過ぎを視覚的に確認できるMACDの実践的な見方・使い方を、チャートを読み解きながら見ていきましょう。
MACDにおける売買シグナルの強さと条件
MACDの売買シグナルには強さを表す条件があり、特にゴールデンクロスとデッドクロスは、出現する場所とクロスの仕方によって売買シグナルの強さが変わります。
条件は以下の通りになります。
- 角度のついたクロス:水平ではなく、×の様なクロスが望ましい
- 0ラインとの位置関係:ゴールデンクロスであれば0ラインよりも下、デッドクロスであれば0ラインよりも上で起きたクロスのこと。
- 複数のシグナルと同時に起こるクロス
角度のついたクロスは、緩やかにクロスするのでは無く適度な角度を保ってクロスすることを指し、上昇(下落)に勢いがある証拠で、強い売買シグナルとなります。
0ラインは、ヒストグラムの上下が切り替わる部分でトレンドの転換点として見ます。
ここで言う0ラインの上下とは高値圏・安値圏は除きます。
高値圏と安値圏では、まさにトレンドが発生している最中なので押し目買い・戻り売りの機会を狙ってエントリーした方が含み損を抱えるリスクが低く、利益が見込める取引を行うことが出来ます。
その他の売買シグナルと同時に起こったクロスでは上記画像のような状況のことを意味します。
複数のシグナルが上昇トレンドを示しているため、信憑性が高いと判断することが出来ます。
すべての売買シグナルが揃う完璧な状況は簡単に表れないため、複数の売買シグナルが同じ方向を示していれば優位性があると言えるでしょう。
押し目買い・戻り売りとは?
戻り売りとは、下降相場の中での一時的な上昇中に売りポジションをとることです。
株価の動きは大抵、細かく上下に動きながら上げたり下げたりするため、大きな下降相場中の上昇で売りポジションをとることにより、多くの利益が見込めます。
押し目買いとは、反対に上昇相場の中での一時的な下降中に買いポジションをとることです
【MACDの見方・使い方】0ラインブレイクアウト
MACDとシグナルが0ラインよりも上か下でトレンドを判断できるため、0ラインを抜けるということは、トレンドが転換することを表します。
この時に、ヒストグラムが増加していると、MACDとシグナルが離れていることを意味しています。
MACDとその平均であるシグナルが離れることは、直近の相場が徐々に平均を抜けて新たなトレンドが始まっていることを意味します。
0ラインを抜けたときとトレンドとは逆のクロスが出たときが取引の目安となるため、0ラインブレイクアウトを狙った戦略は、エントリーとイグジットが明確で初心者におすすめの手法です。
ブレイクアウトとは?
ブレイクアウトとは、抵抗線や支持線、もみ合いなどの一定のリズムで動いている状態を抜けて上や下に価格が離れること。
今までの相場の流れを抜けて、新しいトレンドが作り出されるきっかけにもなる。
【MACDの見方・使い方】トレンドの継続を見極める
先ほど、ダイバージェンスが出現した後はトレンドの反転が起こる可能性が高いと述べましたが、実はトレンドの継続を表す売買シグナルでもあります。
ダイバージェンスとはそもそも、「株価の動きとMACDが逆の方向を示す」というものでした。
例えば、株価は上昇トレンドだが、MACDでは下落というダイバージェンスが起きている場合に買われ過ぎと売られ過ぎを表すMACDが買われ過ぎと判断していないことになるため、上昇が続くだろうという考え方です。
相場は基本的にN字状の波を描いて進むため、MACDが大きなトレンドの押し目(戻り)に過剰に反応した場合、これから更にトレンドが続く根拠となります。
ダイバージェンスは長期にわたって続くことは少ないため、反転と継続どちらかトレンドがはっきりしてからエントリーすると含み損を抱えるリスクを減らすことができるでしょう。
MACDで取引する際の注意点と設定
MACDの仕組みと見方・使い方以外にも、注意点や設定について理解することで、ダマシによる損失を回避できます。
注意点や設定を知らずに売買を行うと、リスクの高い資産運用で大きな損失を被ってしまうかもしれません。
そのような状況に陥らないよう、どこに気を付けて取引を行えば良いのか?詳しく解説していきます。
MACDは短い時間足では機能しにくい
MACDを使用する際に表示させるべき足はトレードスタイルにもよりますが、短い時間足であればあるほど、ダマシが多く発生します。
時間足が短いほど、MACDとシグナルに株価の変動が表れやすく、根拠の弱い売買シグナルが出現しやすくなってしまいます。
短い時間足では、トレンドが出ている相場でも、逆方向の値動きに反応しやすいため、エントリーするべきポイントを絞るのが難しくなってしまいます。
対策としては、根拠の強い売買シグナルに絞ってエントリーすることがあげられますが、エントリーポイントを絞るのであれば短い時間足よりも、初めから日足・週足・月足を使用したほうが良いでしょう。
株式投資では、日足・週足・月足を、見て取引を行うのが一般的なため、初心者は経験を積むのに適した、比較的ダマシの少ない長い足がおすすめです。
MACDに頼り過ぎない
MACDに頼り過ぎてしまうと機能しにくい状況でも、優位性の低い無理があるエントリーを行い、損失に繋がってしまいます。
MACDは、2種類の移動平均線をもとに作られているために、急激な値動きが起きた場合にはどうしても反応が遅れてしまうことがあります。
そんな時に、一目均衡表の様に引いた目線で大きな相場状況を見ることのできるテクニカル指標を使用していると、抵抗線・支持線を確認して抜けるまで待つと考えることができます。
たくさん使えば使うほど良いわけではありませんが、相性の良い複数のテクニカル指標を組み合わせると取引の選択肢が増えることに繋がり、株式投資を行う上で非常に役立ちます。
MACDと相性の良いテクニカル分析の指標である一目均衡表については、一目均衡表とは?雲が分かりやすい日本発のテクニカル分析で分かりやすく解説しているので参考にしてみて下さい。
MACDのおすすめの設定期間は?
せっかくMACDを使用するのであれば、一番機能する設定期間で取引を行いたいものですが、誰でも簡単に稼げるようになる設定期間は存在しないのが事実です。
設定期間はトレードスタイルによっても変化するため、一概にこの設定期間が機能する!とは言えません。
例えば、ポジショントレード(長期売買)を行いたい人が、知らずにデイトレード(短期売買)の設定で取引を行おうとしても、ダマシも多く含んだ売買シグナルが多く発生して、肝心なエントリーポイントを見逃してしまう可能性が高くなってしまいます。
しかし、「ある程度機能するおすすめの設定」が存在するのも事実です。
ほとんどの投資家に機能するMACDの設定期間については、最強のMACD・シグナル設定とは?オススメ設定値と期間をご紹介!で紹介しているので参考にしてみて下さい。
トレードスタイル | トレード期間(保有期間) |
---|---|
デイトレード | 数秒~1日 |
スイングトレード | 数日~数週間 |
ポジショントレード | 数週間~数年 |
【MACDの見方・使い方】まとめ
MACDの仕組みや使い方から設定と注意点までご紹介してきました。
MACDは、「MACD」・「シグナル」の2本線と棒グラフである「ヒストグラム」の3要素で出来ているシンプルなテクニカル分析の指標ですが、売買シグナルの強さの判断条件が多用です。
選択肢が多く、様々な状況においてトレンドを見分ける判断材料になり得るため、MACDを使用して取引を行う際に非常に役立ちます。
また、他のテクニカル指標でも売買シグナルを判断することが必要になるため、この機会にしっかりと覚えておきましょう!
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ラジオNIKKEIの番組「株教室」などでお馴染みの「高山緑星」が代表を務める投資助言サービス。今なら実力証明のための銘柄『次なる大化け候補株』を無料で配信中!!
投稿者プロフィール
- 株取引を成功へと導く重要な指標「テクニカル分析」と「株価チャート」。【テクニカル分析のカタチ】では、ローソク足やチャートの見方、移動平均線やトレンドライン、ボリンジャーバンドや一目均衡表の使い方など。テクニカル重視の幅広いトレーダーに役立つ情報をご紹介します。