出来高とは、「この銘柄がこれから値上がりするかどうか?」の判断材料になる重要な指標の1つです。
出来高を知っていると、情報収集の段階で株価を大きく変動させるかもしれない情報にアンテナを張ることができます。
そのためには、株価と出来高の密接な関係、増加のきっかけにどのような原因・背景があるのか知っていることが重要です。
注目されている価格帯を知る価格帯別出来高や、出来高の大きい銘柄順の出来高ランキングなど、出来高によって分かることは様々です。
このように、出来高を知ることは株式取引の精度向上に繋がってきます。
今回は株式チャートを使いこなすために必要不可欠なテクニカル分析である「出来高」の基本から応用までご紹介していきます!
この記事で分かる!テクニカル分析のこと
出来高とは?銘柄の注目度を視覚化したテクニカル分析
出来高を見ることで、なぜ銘柄の注目度が分かるのでしょうか?
出来高とは、その日に取引された株の数を視覚的に捉えやすくしたもので、取引された株の量が多ければ多いほど、その株の価格も大きく変動しやすくなります。
売買が活発に行われている銘柄は、出来高の大きな増加が見て取れます。
そのため、投資家達の注目を一気に集めることになり、「これから株価を大きく変動させる可能性が高い」と見られたりするのです。
出来高とは売買量を表してくれるテクニカル指標
上記の画像は、丸紅株式会社【8002】の日足株価チャートで、赤い四角に囲まれている部分が「出来高」です。
出来高は、実際に売買が行われた株数を棒グラフにして、視覚的に増減を把握できるようになっています。先ほど、出来高はその日に取引された株数を表していると述べました。
例えば、1日にA株を100株買いたい人と100株売りたい人がいるとします。
実際に売買が行われると、その日の出来高は100株となります。
つまり、「出来高は売買量」を表すので、出来高が大きければ大きいほどその株は活発に取引が行われたという証拠となります。
反対に出来高が少ない場合は取引された量が少ないために、「投資家からの注目が集まっていない銘柄」と考えられます。
このように、「出来高は株の売買量を一目で見て理解することができる」のです。
表示されているのは一見、非常にシンプルな数字ですが、売買量を見て銘柄の注目度を判断できる出来高は、株式投資を行う上で非常に重要で深い意味を持っているのです。
銘柄選定に役立つ出来高の基本的な見方・使い方
出来高の棒グラフを見て、投資家達は一体何を考え、行動しているのでしょうか?
そこを理解するにはまず、出来高がどのように使われているのかを理解しなければなりません。
具体的な使い方を実際のチャートと共に紹介していきます。
出来高を実際に読み解いてみる
上記の画像は、先ほど説明に使用した株価チャートと同じです。
株価が大きく上昇、下落している時には、出来高も同様に急増しています。
このことから出来高が急増したときには、「株価が近いうちに急騰、もしくは急落するかもしれない」と考えることが出来るのです。
あくまで可能性の話ですが、この事実を知っていると取引を行う上で非常に役に立ちます。
また、株を買った場合には、いつかは必ず決済しなければなりません。
上昇トレンドが終盤に差し掛かり、出来高が明らかに減少してくれば、その株を取引している投資家が減っている証拠です。
近いうちに出来高の急増と共に下落することが考えられるので「この株は手放そう」という決断を行うことができます。
出来高の急増時にはその株に対して、良い材料または悪い材料が出てきたのかもしれないと情報収集もしやすくなります。
投資家の売買量を表してくれるだけなのに、どのように市場が動いているか分かりやすくなりますね。
出来高は株価に先行する
「出来高は株価に先行する」という言葉があります。
投資家の注目を集めるようになった銘柄は「出来高が膨らみ」、注目度が低くなってくると「出来高も小さく」なります。
その結果、株価は上昇と下落の変化をしていくのです。
つまり、出来高の増加に伴う上昇・下落の発生は、値崩れがしにくくトレンドの方向が読みやすく、反対に出来高を伴わない場合は値崩れする可能性を持っていると判断できます。
そのため、「出来高は株価に先行する」と言われているのです。
出来高が先行して起きたトレンドのほうが出来高無しで起きたトレンドよりも強いです。
なぜでしょうか?それは多くの投資家が適正価格より安い、または高いと判断した価格で出来高が増えているからです。
上図は出来高の増加に伴った株価上昇の様子です。
決算の発表と配当資金の増大などのIR情報を受け、「この企業は更なる株価の上昇が見込める」と判断され、出来高が増加し、その結果として株価が上昇しています。
IR情報とは?
IRとは、インベスター・リレーションズ(Investor Relations)のことであり、企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動のこと。
IRは、企業の財務状況や経営状態を投資家に(基本的には)嘘偽りなく伝える必要があるため、業界に詳しくない人でも分かるように書かれていることが多いです。
上場している企業であれば、HP上にIR情報を掲載しています。
(非上場の場合は企業側に業績等の開示義務がないため、多くの企業は掲載していません。)
例えば、優れた技術力を持ち、高い需要が期待できるサービスを持っている「株価100円の企業」があるとします。
この企業が開発したサービスは、一般に広く普及することが期待でき、今後も更なる需要拡大の見込みがある場合に「この株はこんな価格では安すぎる!今のうちに買っておこう!」となり、出来高が増加していくことに繋がるのです。
このように、出来高が増加してからの株価の上昇は根拠を含んだ上昇と考えることができます。
他にも大事な根拠を含んだ相場観があるのでまとめました。
出来高の増減をみて取引する場合は参考にしてみて下さい。
出来高 | 株価 | 相場観 |
---|---|---|
少ない状態から急増 | 大きく変動 | 株価の動いた方向にトレンドが出る可能性 |
多い状態から急減 | 変動が少ない | 上昇が強くまだ上がる可能性 |
天井圏で急増 | 下落している | 大きな資金が抜けたので下落の可能性 |
逆ウォッチ曲線で明確にわかる!出来高と株価の関係性
先ほど出来高は株価に先行すると述べたように、出来高と株価は非常に密接な関係にあります。
ここでは有名な「逆ウォッチ曲線」という理論を使って説明していきます。
出来高と株価は8つのサイクルを循環して構築されていくというものです。
それでは詳しく見ていきましょう!
出来高と株価の関係は逆ウォッチ曲線に学ぶ!
逆ウォッチ曲線は、出来高と株価の関係は以下の順番で8つのサイクルを循環するというものです。
- 出来高は段々増加している。株価はあまり動かない
- 出来高の急増と共に株価が上昇開始
- 出来高に伴い株価が上昇
- 出来高が段々減り始める。株価の上昇も弱くなる
- 出来高が急減。株価は停止
- 出来高が更に減り、株価も下落開始
- 出来高に伴い下落
- 出来高が少し増加して下落は停止
出来高と株価はお互いに影響しあう関係にあります。
逆ウォッチ理論は、必ずしも当てはまるわけではないですが、出来高を用いて取引を行う際は頼りになる理論です。
出来高を確認して、8・1・2のタイミングで買うことができるように覚えておくと良いでしょう。
非常に強い上昇または下落の時は、出来高の増減に関わらず株価が理論通りに動いてくれないこともあります。
そんな時は「根拠を含んだ相場観」を思い出して、強い根拠があるから理論通りに行かないと考えることができます。
出来高増加の要因は?相場を予想するための予備知識
株価と出来高が親密な関係にあることは先ほど程解説しました。
では、出来高が変動する要因は具体的にどういったものがあるのでしょうか?
大きく分けると3つの要因をあげることができます。
それでは見ていきましょう!
出来高が急増する要因1.ニュースと決算
毎日放送されているニュースや四半期決算などで、企業にとって良い結果、または悪い結果が発表されることで出来高と株価は変動します。
良い結果がでれば一般的には出来高が急増して株価も上昇するということです。
悪い結果でも出来高は増えますが、株価に悪い内容が織り込まれていなければ株価下落に向かうことになります。
ニュースや四半期決算の発表から、出来高が急増してトレンドが発生することが大半です。
なので毎日のニュースチェックが、株式投資の判断基準に繋がることになります。
四半期決算とは?
企業が1年間を3カ月ごとに決算をまとめて投資家などに公表することを表します。
四半期決算は原則として発表翌日の朝刊投資・財務面に掲載されています。
決算月は2月、9月、12月など企業によって様々ですが、一番多い3月決算を例にすると以下の様になります。
- 第1四半期決算:4~6月分を6月末に発表
- 第2四半期決算:7~9月分を9月末に発表(第1四半期分も含む)
- 第3四半期決算:10~12月分を12月末に発表(第1、2四半期分も含む)
- 第4四半期決算:1~3月分を3月末に発表(第1、2、3四半期分も含む)
出来高が急増する要因2.短期投資家の参入
出来高が少しずつ増加してくると値動きの幅が激しくなり、変動幅も大きくなってきます。
すると、そういった銘柄を狙っている証券ディーラーやデイトレーダーなどの短期投資家が参入してきたりします。
短期投資家は、出来高が増加して値動きの大きくなるであろう銘柄で、短期投資を繰り返し行うことで利益を稼いでいます。
そういった投資家達の参入が増加すればするほど、更に出来高も増えていくことに繋がります。
出来高が急増する要因3.株式分割と初心者投資家の売買
株式分割は、株価が高値をつけていて出来高が増加しにくい相場が続くと行われることがあります。
例えば100株で100万円の株があったとして、個人投資家は高くてなかなか気軽に買うことができません。
そんな時に株式分割を行い、1株を10株に変更します。
すると100株当たりの値段は10万円になります。
企業は、株を買ってもらうために株式分割を行い、手を出しやすくなるので結果として取引する投資家が増えて出来高が増加します。
また、出来高が大幅に増加するとそれに気づいた初心者投資家が売買を始めます。
基本的に中長期の保有で取引を行っている人達です。
出来高が増えていく要因をまとめると、市場参加者の増大や企業の株式分割、企業の決算に影響するようなニュースなどがあります。
投資家心理を読み解く価格帯別出来高とは?
価格帯別出来高は投資家心理を読み解くことのできる大切なテクニカル分析の1つです。
投資家の注目している価格帯を判別することができ、どのような取引を行うか考える手助けをしてくれます。
これまで常にチャートの下に表示されている「売買量を判別できる出来高」について説明してきました。
ここでは「縦の出来高」とも呼ばれる価格帯別出来高の見方から分析方法まで説明していきます。
価格帯別出来高の基本的な見方
図はとある日のアウトソーシング【2427】の株価チャートです。
上図の赤い四角で囲まれている青いグラフの部分が「価格帯別出来高」です。
株価がいくらの時に、何株の注文が入っているのか、一目で判別することができます。
分かりやすく表すと下表のようなイメージです。
株価 | 出来高 |
---|---|
1000円 | 20000株 |
1050円 | 40000株 |
1100円 | 10000株 |
上の表で考えると、1050円の出来高が一番高く、多くの投資家が1050円を適正価格と考えている可能性が高いと判断することができます。
例えば、1150円まで一旦伸びてから下落を始めた場合に、1050円で下げ止まることがあります。
それは、適正価格と考えられている1050円でまた買おうという投資家心理が働くからです。
反対に、950円まで下落したとして上昇に反転した場合は、1050円で上げ止まってしまうことがあります。
これは、1050円で買った投資家達が株価が戻ってきたために売ることが多いからです。
出来高の多い価格帯は、上値抵抗線、下値支持線といった「上昇と下落の転換点を支える境界線」になりやすくなります。
上値抵抗線と下値支持線とは?
上値抵抗線とは、上昇を始めたときに上げ渋る価格帯のこと。
下値支持線とは、下落を始めたときに下げ渋る価格帯のこと。
大きな買い・売りが集まっていたり、何かしら理由があると考えられる。
価格帯別出来高の分析方法と注意点
価格帯別出来高を使って分析するときには、現在の株価と出来高の多い価格帯を見ます。
現在の株価よりも高い水準に大きな出来高がある場合には、その出来高は「上値抵抗線」となり、上昇を抑える境界線の役割を果たします。
そのような状況で下落トレンドに振れれば、損切の売り注文を巻きこんで大きな下落になりやすいです。
そこから上昇トレンドに振れたとしても、上昇を抑えられてしまう上値抵抗線があり、抱えている損失を少しでも少なく抑えたい投資家の売りが入ることで上がりにくくなると考えられます。
現在の株価よりも低い水準に大きな出来高がある場合、その出来高は「下値支持線」となり、下落を支えてくれる境界線の役割を果たします。
出来高の大きな部分で買った株は常に利益を含んでいる状態なので、多少の下落でも焦って売る投資家は少ないです。
そのため比較的には落ち着いた相場になると考えられます。
価格帯別出来高が少ない価格帯は、急騰、急落どちらにも大きく振れる可能性があるので注意です。
価格帯別出来高は、あくまで過去の取引量であり、現在も他の投資家達がポジションを保有しているとは限りません。
投資家心理を推測して客観的にどうするべきか考えることが重要です。
出来高の大きい銘柄を教えてくれる出来高ランキング
ここまでは出来高が増加・減少したときに株価がどのように動くか、出来高と株価の関係を説明してきました。
しかし、出来高と株価の関係が分かっていても、出来高の大きい銘柄をタイムリーに見つけることができなければ勝負ができません。
どの銘柄の出来高が大きいか判断するのに、1つ1つ見て探し出すことは非常に困難です。
今日はどの銘柄の出来高が大きいのか知りたい時に役に立つのが「出来高ランキング」です。
出来高ランキングは、大量にある銘柄の中から出来高の大きい銘柄を表示してくれます。
出来高ランキングの見方・使い方
出来高ランキングはYahoo!ファイナンスなどで見れたりしますが、その日の取引されている銘柄で出来高の大きい物から順に並んでいます。
出来高の増加率を前日と比較して表示することも可能です。
出来高が大きくなり始めている銘柄を探してその株価と出来高の関係性を上手く利用して株式投資に役立てていきましょう!
注意としては、出来高ランキングは、株価が安い銘柄、低位株(株価100円~300円ほどの銘柄)やボロ株(株価100円以下の銘柄)の出来高が多くなってしまいがちです。
単元株数は全て100株となり、今はもう単元株数1000株がなく、出来高ランキングは以前より活用しやすくなったのではないでしょうか。
出来高をあまり気にせずトレードされている株初心者の方も多いかと思いますが、出来高ランキングについて詳しく知っておくことは、ライバルの投資家達に差をつけることに繋がります。
出来高ランキングについては出来高ランキングでトレンドの株を掴む!で詳しくまとめてあるので参考にしてみて下さい。
「出来高とは」まとめ
今回は、“出来高とは?出来高の使い方・見方”について解説してきました。
出来高は取引された株数のことを表していて、その株に注目が集まっているかどうか見る大事なテクニカル指標です。
出来高と株価の関係性、増加要因を理解すれば、ニュースを見たときに株価を変動させるかもしれない、と判断することができます。
他の分析方法にも言えることですが、100%の結果を保証するものではありません。
出来高の結果だけには捉われずに、あくまで判断材料として受け取って下さい。
最終的には出来高だけでなく、他のテクニカル分析やニュースなどのファンダメンタルズ分析と組み合わせることが重要です。
そうすることで取引の精度が上がっていきます。
自分なりの投資方法を導き出すことができるように、基本的な使い方・見方を覚えて相場に慣れていきましょう!
\個別銘柄のテクニカル分析や相場展望に関する情報なら?/
ラジオNIKKEIの番組「株教室」などでお馴染みの「高山緑星」が代表を務める投資助言サービス。今なら実力証明のための銘柄『次なる大化け候補株』を無料で配信中!!
投稿者プロフィール
- 株取引を成功へと導く重要な指標「テクニカル分析」と「株価チャート」。【テクニカル分析のカタチ】では、ローソク足やチャートの見方、移動平均線やトレンドライン、ボリンジャーバンドや一目均衡表の使い方など。テクニカル重視の幅広いトレーダーに役立つ情報をご紹介します。