移動平均線とは?チャートの見方や設定ごとの使い方

移動平均線

移動平均線とは、トレンドの方向感、売買タイミングを見極める判断基準として多くの投資家に利用されているテクニカル分析の1つです。

移動平均線は、ローソク足との位置関係や傾き1つ1つに意味があり、それを参考に取引を行っている投資家達の心理状況もチャートに反映されてきます。

そのため、移動平均線を使用してチャートを読み解くことは、相場の流れに対して理解を深めることに繋がるのです

また、他のテクニカル分析にも移動平均線は必要になってくる場合も多く、覚えておくと理解がスムーズになるのでこの機会にぜひ抑えておきましょう!

それでは、「移動平均線の基本的な知識(見方や種類)から移動平均を参考にして実際に取引する方法」まで分かりやすくご紹介していきます!

移動平均線とは?種類と設定期間

移動平均線とはそもそも何なのでしょうか?

移動平均線は、トレンドの方向感、売買タイミングを読み取ることができると広く知られている最も基本的なテクニカル分析の1つで、株式投資やFX取引(外国為替証拠金取引)を行う多くの投資家が参考にしています。

移動平均線は米国で著名なチャーチスト「J.E.グランビル」が統計分析に使われていたのをグランビルの法則としてまとめ、相場分析に利用されることとなったようですが、誰もが知ってるような有名なテクニカル分析を理解するということは、参考にしている多くの投資家の心理を理解することに繋がります。

移動平均線には単純移動平均線(SMA)、加重移動平均線(WMA)、指数平滑移動平均線(EMA)など様々な種類がありますが、ここでは株式投資を行う上で重要なテクニカル分析である移動平均線の仕組みを分かりやすく説明してみたいと思います。

なお、移動平均線を理解するには、まずローソク足の見方を理解しておかなければなりません。

ローソク足の見方については「ローソク足とは?初心者必見!ローソク足の見方・読み方」に詳しくまとめてあるので参考にしてみて下さい。

移動平均線の計算方法とその仕組み

株価チャート中の移動平均線の画像

移動平均線とは、上図の短期線、中期線、長期線の様な、ある一定の期間の価格(多くの場合は終値)の平均を結んで出来たグラフのことを言います。

移動平均線が上下しているのを見ることによって、「トレンドの移り変わりを視覚的に判断」することが出来ます。

移動平均線はその期間によって様々な種類があり、日足(5日、10日、25日、30日、75日、80日、150日、160日、200日)、週足(13週、26週)、月足(12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月、120ヶ月)などが使われ、日足の移動平均線は「DMA」と呼ばれたりしますが、期間ごとに読み取ることのできるトレンドは異なり、値を拾う期間が長いほど長期のトレンドを表す移動平均線となります。

移動平均線の仕組み・どのように数値が計算されているかを説明するために、ここでは5日移動平均線を参考に解説してみます。

5日移動平均線は当日を含めた過去5日間の終値を結んだ線で、主に短期のトレンドを計るために使用されています。

5日移動平均線がどのようにして作られているか、以下にまとめてみました。

日付 終値 移動平均線の値
1日目 120
2日目 130
3日目 150
4日目 140
5日目 170 142 (1~5日目の和÷5)
6日目 200 158 (2~6日目の和÷5)
7日目 180 168 (3~7日目の和÷5)
8日目 210 180 (4~8日目の和÷5)

5日移動平均線は、当日を含んだ過去5日間の終値の和を5で割って平均値を出し、算出された平均値を結んでいくことによって線になります。

25日移動平均線や75日移動平均線や200日移動平均線など、他の種類の移動平均線もそれぞれの平均値を出しグラフ化されていて、終値を拾う期間によって読み取ることのできるトレンドは異なってきます。

移動平均線の種類(短期・中期・長期)

先ほど期間によって読み取ることのできるトレンドは異なると述べましたが、移動平均線では終値を拾う期間を自由に指定することが出来ます。

一般的な設定として使用されているのは以下の期間になります。

短期トレンド 5日移動平均線、25日移動平均線、75日移動平均線
中期トレンド 13週移動平均線、26週移動平均線
長期トレンド 9ヶ月移動平均線、24ヶ月移動平均線

他にも様々な種類がありますが、終値を拾う期間が違うだけで計算方法は先ほどまとめた5日移動平均線と全く同じです。

移動平均線は、平均値を結ぶことによって常に変動し続けており、株価に惑わされずにトレンドの方向を追うことができます。

短期のトレンドを表す5日平均線などは直近の値動きに近く、株価の変動に素早く反応できる反面、「だまし」に引っかかりやすいとも言えます。

中期、長期のトレンドを表す移動平均線は、だましの影響は少ないと言えますが、短期移動平均線と比べて株価が変動したときの反応は遅くなります。

だましとは?

だましとは、テクニカル分析で買いシグナルや売りシグナルが出ているのにその通りに上昇・下落が行われないことを指します。

 

騙された投資家は損失を出す可能性もあり、このだましの発生を100%避けることは出来ません。

移動平均線は期間によって以上のような違いがあり、どちらもメリット、デメリットが存在します。

上手く折り合いをつけ、自分の投資スタイルに合ったものを使うことが大切です。

単純移動平均線(SMA)

先ほどまで説明していた移動平均線は、単純移動平均線と呼ばれるもので、一定期間の終値の平均値を繋げて線にしたものです。

正式名称は「Simple Moving Average」といい、省略されて「SMA」と呼ばれています。

指数平滑移動平均線(EMA)

指数平滑移動平均線(EMA)は、SMAの計算式で直近の終値を2倍にしたもので、SMAよりも実際の価格に近い移動平均線となります。

5日EMAを例にすると、5日目の終値のみを2倍にして計算します。正式名称は「Exponential Moving Average」といい、省略されて「EMA」と呼ばれています。

下記の画像を見ると短期移動平均線では大差は無いですが、25日、75日となるとSMAよりもEMAのほうが、より実際の価格に近い動きをしているのが分かるのではないでしょうか。

※太線:EMA、細線:SMA、水色:5日移動平均線、赤色:25日移動平均線、緑色:75日移動平均線

SMAとEMAの推移の比較(5日移動平均線、25日移動平均線、75日移動平均線)画像

株式投資では、過去の価格よりも現在の価格が大切です。

いくら過去はこの価格だった、と言っても現在の価格で取引を行うので、過去の価格はあくまで分析の材料でしかありません。

より直近の価格に寄せた移動平均線を使うことで、過去との差異が減ります。

そのため、SMAよりもEMAが投資家達に好んで使われていたりします。

基本的にテクニカル分析は、市場参加者が使用することによりチャートに変化が現れます。

多くの投資家が同じ分析を使用することで、そのテクニカル分析の予想に近い株価の変動が起こりやすくなります。

このように、多くの投資家が使っているテクニカル分析を使用することは、自身の取引の根拠を強めることに繋がります。

位置と傾きの組み合わせが重要!移動平均線の見方

移動平均線の役割のメイン画像

それでは、移動平均線から具体的に何を読み取ることができるのでしょうか?

移動平均線では、ローソク足との位置関係や傾きからトレンドの方向や強さ、投資家に注目されている価格帯を読み取ることが出来ます

ここでは、移動平均線の果たす役割とその考え方を解説してみたいと思います。

移動平均線の位置から見るトレンド方向

レオパレス【8848】株価チャート中の移動平均線の位置とトレンド(上昇トレンド、下落トレンド、もちあいトレンド)の画像

とある期間のレオパレス21【8848】のチャート画像を用いて見てみたいと思いますが、移動平均線は、ローソク足との位置関係によってトレンドを見極めることができます。

  1. 移動平均線とローソク足が重なっている位置にある時にはもちあいトレンドを表す。
  2. ローソク足が移動平均線よりも上の位置にある時には上昇トレンドを表す。
  3. ローソク足が移動平均線よりも下の位置にある時には下落トレンドを表す。

このように、ローソク足との位置関係に注目することで、トレンドをより視覚的に分かりやすく捉えることができます。

移動平均線の傾きとトレンドの強弱関係

また、移動平均線の傾き具合からは、トレンドの強さを読み取ることが出来ます。

移動平均線は終値の平均値であるため、傾きが急になっているということは株価が急変したからであると考えられるのです。

株価が急変するような強いトレンドは、勢いがあるのでトレンド方向に上昇・下落を続けたりします。

そのため、移動平均線の傾きはトレンドの強さを判断することに役立ちます。

移動平均線の傾きが表すシグナルは以下の種類です。

  • 移動平均線が右肩上がりで傾きが急なほど上昇トレンドが強い。
  • 移動平均線が右肩下がりで傾きが急なほど下落トレンドが強い。
  • 移動平均線が水平で傾きがあまりない場合はもちあいトレンド。

位置関係と組み合わせて見るとトレンドの方向、強さを判断する根拠が強くなり、精度が向上します。

例えば、ローソク足の上に位置している移動平均線が右肩上がりで、傾きが急である場合はしっかりとした上昇トレンドであると言えます。

移動平均線の抵抗線・支持線としての見方

シーズHD【4924】株価チャート中の支持線・抵抗線としての移動平均線の画像

上記画像はとある期間のシーズHD【4924】のチャート画像ですが、移動平均線は、株価が拮抗する価格帯として見られる抵抗線・支持線の役割も果たします。

上記画像の左の赤い四角の部分を見ると、移動平均線が上値抵抗線となり、移動平均線のある価格帯でローソク足が押し返されているのが分かるかと思います。

抵抗線・支持線とは?

抵抗線とは、上昇を始めたときに上げ渋る価格帯のこと。

 

支持線とは、下落を始めたときに下げ渋る価格帯のこと。

 

大きな買い・売りが集まっていたり、何かしら理由があると考えられる。

抵抗線と支持線は、過去に価格が止まった価格帯でもあり、また値動きが押し返されるかもしれないと投資家達は注目していて、ここでの反落・反発を予想したトレードを狙うことができます。

また、抵抗線と支持線を抜けるとトレンドが発生しやすいという性質を持っており、上記の画像でも線を抜けた後逆の方向にトレンドが発生しています。

今まで値動きの止められていた価格を抜けるということは、新たなトレンドの始まりを意味するためです。

このように移動平均線は、見方によって様々な役割を担っており、取引を行う上で非常に重要な情報を読み取ることができます。

移動平均線の実践的な手法・使い方

移動平均線の仕組みとどのような役割を果たすのかが分かったところで、次に代表的なチャートパターンを例に具体的な使い方を説明してみたいと思います。

他の投資家が意識している売買サインや見方を知ることで、どのように取引すれば良いか考えやすくなります。

実際のチャートを読み解きながら、移動平均線の実践的な使い方を見ていきましょう。

移動平均線の「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」

株価チャート中の移動平均線によるゴールデンクロス・デッドクロスの画像

※水色:5日移動平均線、赤色:25日移動平均線、緑色:75日移動平均線

「ゴールデンクロス」と「デッドクロス」は、移動平均線が表すトレンドの転換のシグナルのことを指します。

ゴールデンクロスとは、短期移動平均線が中期・長期移動平均線を上抜けることを指し、上昇トレンドへの転換の可能性を表します。

デッドクロスとは、短期移動平均線が中期、長期移動平均線を下抜けることを指し、下落トレンドへの転換の可能性を表します。

上記画像でもゴールデンクロス・デッドクロスが発生した後に上昇・下落に転じているのが分かるかと思います。

短期の移動平均線が中期・長期移動平均線を抜けるということは、直近の価格が過去の価格水準よりも高く(低く)なり始めていることを表します

過去のトレンドと比べて買いと売りが反転しつつある状況を示しているために、相場の転換サインとして多くの投資家に知られています。

移動平均線3本が同じ傾きのパーフェクトオーダー

株価チャート中の3本の移動平均線が同じ方向を向いている(パーフェクトオーダー)画像

パーフェクトオーダーは、3本の移動平均線が同じトレンド方向を指し示している状態のことを指します。

ローソク足が3本の移動平均線より上に位置していて、しっかりと上向きであることも確認できます。

パーフェクトオーダーは、何か他の下落根拠が無い場合、示されているトレンドの向きに従って順張りで取引をするべきです

上記画像では長期・中期・短期のすべてのトレンドが上昇を表しているので、このトレンドに逆らった取引を行うと、何度も損切を行わなければいけなくなってしまいます。

値ごろ感に頼った逆張りではなく、事実として出ているトレンドに乗ったほうが比較的安全と言えるでしょう。

順張り・逆張りとは?

順張りとは、トレンドが発生しているときにそのトレンドと同じ方向に売買することで、トレンドフォローとも呼ばれる。

 

逆張りとは、トレンドが発生しているときにそのトレンドと逆方向に売買することで、カウンタートレードとも呼ばれる。

移動平均乖離率(いどうへいきんかいりりつ)

ローソク足が移動平均線から乖離(かいり)している画像

上記画像はとある期間の駅探【3646】のチャート画像ですが、移動平均乖離率(いどうへいきんかいりりつ)は、短期・中期・長期の移動平均線と現在の価格がどのくらい離れているかを示したものになります。

基本的には、ローソク足と短期移動平均線が大きく離れた場合は急騰・急落が起こっている状態です。

急騰・急落の様に移動平均線から離れすぎたローソク足は移動平均線に戻ってくる、と言われています。

その背景には、行き過ぎた急騰、急落による投資家達の利益確定決済、もうそろそろ戻るだろうという逆方向への取引などの投資家心理があるためです。

このような場合は、大きく動いた方向とは逆方向に売買するいわゆる逆張りのチャンスがあります。

移動平均線との乖離率を見て逆張りで取引を行うときは、どこで反転するのかが重要なポイントとなってきます。

「移動平均線とは」まとめ

移動平均線の仕組みや役割、実践的な使い方などをご紹介してきました。

移動平均線がトレンドの方向感、売買タイミングを見極める判断基準として多くの投資家に利用されている理由をお分かり頂けたでしょうか?

移動平均線は、過去の価格水準から現在の価格はどの辺りに位置しているかが一目で分かり、買われすぎや売られすぎ、抵抗線と支持線としても活用できるため非常に役立つテクニカル分析として広く知られています。

そのため、移動平均線を使用してチャートを読み解くことは、投資家心理も含めた相場の流れに対して理解を深めることに繋がるのです

また、他のテクニカル分析を行う際にも必要な知識となってくるのでしっかりと覚えておきましょう!

アナリストによるチャート・テクニカル分析

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